My Photo

twitter

November 2016
Sun Mon Tue Wed Thu Fri Sat
    1 2 3 4 5
6 7 8 9 10 11 12
13 14 15 16 17 18 19
20 21 22 23 24 25 26
27 28 29 30      

Recent Trackbacks

無料ブログはココログ

« January 2012 | Main | March 2012 »

February 2012

ダニエル・ラノアという音像

Sound & Recording Magazine (サウンド アンド レコーディング マガジン) 2012年 03月号 [雑誌]

今月発売の「サウンド&レコーディング・マガジン」がダニエル・ラノアの特集だったので、買ってみた。よく知人のミュージシャン宅に置いてあったりした本誌ですが、私が買ったのは初めて。何でも1月に初来日してライブをやってったらしい。くそう、行きたかったな。

なんでこの人にこだわるかというと、80~90年代にかけてこの人が関わった音を一番好んで聴いていたから。20代の半ば頃突然U2の「ヨシュア・トゥリー」が大好きになってその年(1986年)はほぼ1年中聞く事になる。で、そのまんまU2ファンにスライドするのだけど、前作「焔」のお城で録音したというあまりに深くて広い音像とか、「ヨシュア~」の寒々とした空気感(当時洋楽の知識が全くない知り合いの女の子が『これ寒いとこの音楽だね』と言ったのは、あまりの慧眼さに未だに覚えている)とか、これは一体何なんだろうとずっと考えてた。当時はプロデュース役がずっと一緒にやってきたスティーヴ・リリーホワイトからブライアン・イーノにバトンタッチされ、彼らの隠れていたポテンシャルをグッと引き出し好セールスに繋がった事が話題になったばかり。デヴィッド・ボウイからトーキング・ヘッズまで、イーノが関わるとアーティストの音は劇的に進化/深化する。そして、そのアルバムはどれもが名盤となるので私の中でプロデューサーとしてのイーノの信頼は絶大だった。だから、U2もまたそんなイーノのマジックによって大化けしたのかな、と一応は納得した。そんな頃はラノアの存在はほとんど歯牙にもかけなかった。

ある日、業界の知人から何本かサンプルのテープをもらう。その中の1本にダニエル・ラノアの2枚目のソロ・アルバム「フォー・ザ・ビューティ・オブ・ウィノナ」があって、1曲目の「THE MESSENGER」聞いて目から鱗がボロボロ落ちた。自分が今まで持ってかれてたのは、U2やイーノの仕事よりもラノアの仕事なのだと知った瞬間だった。

その後調べていくとピーター・ガブリエルの出世アルバム「SO」のエンジニアも彼だとわかった。「SO」なんてその年(1987年)ほぼ1年中聞いてたアルバムだし。(当時は気に入るとずっとそのアルバムを毎日聴いてたんだな)

何と言ってもその圧倒的な「音像」感。音の奥の奥にまで奥行きがあって、その真ん中で音が鳴り響いているという感覚。例えば「焔」のアルバムタイトル曲で聞かれるズドン!という深さを持ったオケヒット(これが本物なのかシンセなのか謎なんだけど多分両方のミックス)とか、同じくオーケストラのクレッシェンドしてくるピッツの音の立ち方とか、「THE MESSENGER」の光の明滅の様に遠くで鳴っていてるスネアのような音とか、これらにずっと身をゆだねていると自分の内面の深いところにフェードインしていくような錯覚すら覚え実に心地よい。こうした立体感を持った音像構築へのアプローチという点では、私には冨田勲氏との共通項も見えてくる。ところで昨年公開された「GET LOUD」という映画では、ジ・エッジは自身のギタープレイを語る際にほとんどエコーとディレイの話しかしないのだけど(笑)、そりゃあさぞかしラノアとの相性もよかったんだろなあ。

今回のサンレコの特集でラノアのこれまでほとんど謎だった来歴がわかった。何とラノアを見出したのはブライアン・イーノその人だった。U2のアメリカン・ルーツ・ロックへの憧憬がラノアに辿り着いたと思いこんでたけど、実はイーノがラノアをU2に紹介したのだと。なるほどなあ。そのサウンドスケープ感覚は、イーノが提唱する環境音楽にすんなり繋がる。

以下ラノアが絡んだアルバムを列挙します。

■FOR THE BEAUTY OF WYNONA/DANIEL LANOIS(1993)
フォー・ザ・ビューティ・オブ・ウィノナ
ラノア、ソロ2枚目。ミニシアター系映画のビジュアルの様なジャケ、美しいメロディ、シンプルなバンド構成、そして音像。一アーティストとしても充分に存在感を示した完璧な1枚。歌詞にベアトリス(多分ダル)とか、トニ・ハリディとか同時代の有名女優やミュージシャンが出てくるが当時交流があったのか、それとも単なるファンなのか。なのでウィノナというのもウィノナ・ライダーかと思いきや、どうやらこれは地名らしい。

■ACADIE/DANIEL LANOIS(1989)
アカディ
ラノア、ソロ1枚目。個人的に後追いで聞いたせいか、あまり強い印象はない。ラリー・ミューレンJrとアダム・クレイトンのU2リズム隊が参加。あとブライアン・イーノ他、弟のロジャー・イーノも参加している。そう言えば「ヨシュア~」の製作過程を追ったDVD「クラシック・アルバム」では、ラノア飛び入りのU2ライブの映像がちょっとだけ見れる。

■ROBBIE ROBERTSON(1987)
Robbie Robertson
ザ・バンドのリーダー、ロビー・ロバートソンのソロデビュー作。U2メンバーがフル参加しているのが2曲と、トニー・レヴィン、マヌ・カッチェ、そしてピーガブ本人やら「ヨシュア~」「SO」2大ヒット作の面子が一堂に会する豪華な1枚。しかし、ロビー自身の華の無さのせいかアルバム全体の印象は地味。でも音世界はしっかりラノア。「ヨシュア・トゥリー」メガヒットの直後のリリースであるが、まさか二匹目のドジョウを狙ったか。その後ハウイー・Bなど売れっ子を起用する事が多かったので、一層その印象を強くする。

■SO/PETER GABRIEL(1986)
So
今さら何をかいわんやの圧倒的名盤。アバンギャルドと俗っぽさの融合、プログレとモータウンの幸せな出会い。あまりに売れすぎてポップアルバムとして軽視されがちだが、このアルバム内で行われている事はほとんど奇跡と言っていい。この年「ジャパン・エイド」で来日する訳だが見に行ったよなあ。ちなみにラノアの仕事として聴き直してみると、まだそれほど彼のカラーが出ている訳ではない。あと、トニー・レヴィン最高。大好き。

■THE UNFORGETTABLE FIRE/U2(1984)
Unforgettable Fire
U2、イーノ、そしてラノア。3つの才能がここに集結!世界はほんとに素晴らしい。ヒット曲「プライド」に隠れがちだが、このアルバムの真価はアルバムタイトル曲「焔」にあり。アイルランドの古城にオーケストラを招き入れ、それをバック・トラックとして鳴らした余りに贅沢なバンド・サウンドの深さを堪能すべし。ところで映画「GET LOUD」では、ジミー・ペイジが「MISTY MOUNTAIN HOP」のドラムの録音について語るくだりがある。そう、あれもまた、深い。

■THE JOSHUA TREE/U2(1984)
ヨシュア・トゥリー
今さら(以下同文)。ここまで挙げたアルバムはどれも80年代ド真ん中の作品にあって、あの最先端なゲート・リヴァーブを使ってないのよね。私があの頃U2に絶対の信頼を置いたのも、軽薄短小・軽佻浮薄な風潮にあって実に地道である意味時代遅れな音楽をやってる点だった。サンレコの記事によればラノアもまた、流行を追随する事なく自分のサウンドを磨いていた男だったらしい。そんな男たちが奇跡の出会いを経て時代を制した記念すべき1枚。間違いなく墓場に持っていく一枚だかんね。ちなみにCDとLPのアートワークは当時から違うのよ。

こうして見てみると、どれもジャケがモノトーン系(ないしはそれに近い)なのも面白い。これらは、20代~30代にかけて一番愛でてきた音たち。今回サンレコの記事をきっかけにいろいろと聞き直す事ができて楽しかったわ。あと、「GET LOUD」に関しては書かないと気が済まないんで、次回書くからね。BDも買ったし。

« January 2012 | Main | March 2012 »