鏡の中の野心

一般にも広く名前が知られたウルトラセブン・アンヌ隊員役のひし美ゆり子さんが、セブン終了後に数々の映画でスッポンポンになっているのもこれまたかなり有名な話。本日のタイトルはそんな1本で、数年前に発掘DVD化された非常に幻度の高い作品。結構なヒットになったようで初回生産があっと言う間に完売した。
でこの映画、アンヌファン・ひし美ファンにとって”至宝”であるのは間違いないが、俺のようなイカれポンチな音楽ファンにとっても全く別の価値を持つ作品だったのだ。
TVのドラマやアニメで流れる劇伴の中には、その作品のために作られた音楽だけでなく既存曲が使われる場合がある(これを流用曲と言ったり、エクストラ音楽と言ったりするが)。有名ヒット曲やクラシック曲、製作スタッフがその時好きだった曲、たまたまその辺にあったレコード、そしてメディア(レコード・CD)を購入するだけで自由に使用する事が出来るフリー音源まで、油断していると全く何が混入してくるかわからない。時にそれが異様に画面にマッチしたりして強い印象を残す事があり、その後サントラ盤にも収録されず出展もわからずかくて永きに渡り我々を煩悶させるのがこれら流用曲。
この映画に使われている音楽は、そんなこれまで謎だった流用曲の数々だった。
<タイトル曲>
まず映画のタイトル曲からしてびっくり。「科学忍者隊ガッチャマン」のファンには「ジョーのテーマ」として語り継がれているあの曲がフルサイズ・SEセリフ被り一切無しで流れているではないか。これ他にもイデオンなどで流れたという証言があるし(未確認)、私の記憶ではキカイダースナックのCM(おまけが丸いカードでラッキーカードで当たるアルバムがベルト型をしていた)でも使われていたような(当然未確認・・・って確認できる日が来るのであろうか)。焼け付くようなトランペットの音が、ほこりっぽい70年代な西日を思い起こす。ジリジリとしていてシビれるほどカッチョいい。今持って出展不明。
<40分頃>
でまあ、ジゴロ役荒木一郎の手腕にコロコロ騙されていくお姉さん達との絡みにいい加減食傷してきたところで、キレンジャー畠山麦が出てきて少し目が覚める(ちょうどライブエイドをリアルタイム視聴していた時、夜明け頃マドンナで寝落ちかけるが、レッド・ツェッペリンが出てきて目が覚めたような)。ここにかぶってくるちょっと調子のいいジャズロック風の曲が、ウルトラマンタロウ・モチロンの回で奴が出現するたびに鳴り響くあの曲。主メロを何で弾いているかわからないが、どことなくローズ系のエレピを想起させる。もしくは、ハモンドの音をかなり極端に加工したか。(余談であるが、ピンク・フロイドの「エコーズ」などで冒頭からギターのように鳴り響くあの音もハモンドで鳴らしているらしい。あの楽器は我々の知っているいかにもハモンドな音から、かなりかけはなれた音も出す事が可能なのだのだ。その意味で元祖シンセ的な存在でもあった)これまた出展不明。
<49分頃>
物語も中盤頃、ラブホにて医者が女子高生のスカートに頭突っ込んで「これはいかんなあ。妊娠しているようだ。」とほざき淫行に及ぼうとするすさまじくバカバカしいシーン。絵面のバカさとうらはらにここで流れるのはこれまたガッチャマンでギャラクターの陰謀が人類を脅かすシーンで散々流れたデザスター音楽なのだ。地鳴りのような持続音にノーコード(無調)的にラッパの音が断続的に鳴り響く。絶望と不安をたくみに表現した名曲だ。当然出展不明。
<1時間10分頃>
屋上で荒木ジゴロが陰謀に気づくシーン。ここで流れるのは何故かキカイダーでイヤという程聞かされたあの曲。ダーク破壊部隊の暗躍には不可欠のあの曲で、しかも後の戦隊シリーズ「バトルフィーバーJ」などでも延々と流用されまくる。謎曲ばかりで構成されている本作の音楽群にあって一見珍しく出展の明らかな曲だが、実はすでにキカイダーの時点で「五番目の刑事」からの流用であるという点で同じ穴のムジナ。このあたり原作者の戸川昌子ご本人が出演しているが、どう見ても潤沢に予算があったと思えない本作でさらに無駄に持ってかれたと思えるゲストである。もっともご自身の原作の映画化なので、サービスして出てくれたとも考えられるが。
<1時間14分頃>
ジゴロ荒木が暴力に見舞われるシーン。ここでまたガッチャマン・デザスター音楽が流れるが、未だ全貌が分からないこの曲の別の部分の使用である。
映画は1972年松竹封切りなので、その線で詰めていけばこれらの謎の流用曲の出展も明らかになるかもしれない。おそらくガッチャマン関連の2曲は音の感触からして同一人物(またはバンド)の手によるものと思われる。ちなみにこの映画の音楽クレジットは「白井多美雄」となっているが、上記の謎曲のインパクトが強すぎるため他の曲の印象が全くと言っていいほどない。
最後にファンには強烈な印象を与えながら長年謎だった曲の出展が近年明らかになった例を2件。
<ウルトラマンタロウ・ムルロアのテーマ>

ウルトラの国にウルトラ6兄弟が終結し、ゾフィが内山まもるの絵を使ってウルトラの国の歴史を語る(文章で書くと訳がわからんな)壮大な前後編で、大怪獣ムルロアの黒煙で暗黒世界と化す地球のシーンで流れたあの曲。不吉なブラスと不安定な女性コーラスが更に不安を掻き立てる。日暮氏の劇伴と音の感触が近いため、オリジナルと思われていたがいつまで経ってもサントラ盤に入ってこないので長年謎だった曲。これが電子音楽の草分け的存在だったジャン・ジャック・ペリーのアルバム「Good Moog」の中の1曲だった事が近年判明した。ムーグ使いだったこの人の曲には、他に「Baroque Hoedown」という曲がある。これなんと、東京ディズニーランドのエレクトリカル・パレードのあの曲なのである。いや、タロウから東京ディズニーランドにリンクするこの人すごすぎ。ちなみにこのCDにはモットクレロンが野菜をジャンキーのように食いまくるラリパッパ曲も収録されている。
<装甲騎兵ボトムズ・レッドショルダーマーチ>

「地獄の黙示録」を模したクメン編からいきなり宇宙空間に放り出されたサンサ編冒頭にて、絶望的な静寂に満ちた宇宙空間に鳴り響く軍隊マーチ。その鮮烈さ故に永年ファンが渇望し続けた1曲。これが「二人の水兵と一人の将軍」という映画のサントラの1曲だった事が本年判明した。瞬間風速的にアマゾンでも上位にランクインされ、一時はプレミアもついたりとネット上の騒動も記憶に新しい。ちなみにこのサントラ盤、まともに聴いていくと軽快なテーマ曲の方が妙に印象に残ってしまうのだが。さらにこのCDには、劇場版ガンダムでギレン・ザビがガルマの死を悼んで(正確には利用して)ジオン公国国民をアジるシーンで流れていた曲も収録されている。1枚で2つも見つかった大変コスト・パフォーマンスのよい例。少なくとも80年代前半の数年間、日本サンライズの現場にあったレコードだったのね。
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"デザスター音楽"って
"侵略歌謡"と同じで
かなり興奮してメールで書き走った記憶があるんですが
今あらためて聴くと
音感含め表現としては案外間違ってないですねぇ
Posted by: | December 02, 2007 at 07:13 AM
すみません
名前入れ忘れました。上のは私です。
"いわゆる"デザスター音楽については
昔、いろいろ推察したんですが
よくわからないです。
各作品の録音担当が
ガッチャマン(オムニバス→ザック)
イデオン(オーディオプランニングユー)
と表面上関連がわからない。
効果音担当が
イシダサウンドプロ系という共通点があるんですが…
Posted by: xichoux | December 02, 2007 at 07:41 AM
「鏡の中の野心」愚僧もDVD買いましたが「ジョー」の他にもいろいろあったのですね。
「二人の水平と一人の将軍」も購入。問題の2曲以外もけっこうエエ音楽だったという感想です。そのうち「レッドショルダー」のほうは、先日ゲームの仕事でマネした曲を作ったらボツになりました。
Posted by: ミウラ和尚 | December 02, 2007 at 01:08 PM
ムルロア、モットクレロン、レッドショルダー。
全部が感激の情報でした!
こちらを覗かなければ、一生知らないままだったかもしれない(^^;
Posted by: ぷる | December 03, 2007 at 12:02 AM
http://jp.youtube.com/watch?v=JXBoaD519P8
これってペリー本人ですよね
youtubeの恩恵だなぁ
『鏡の中の野心』
>このあたり原作者の戸川昌子ご本人が出演しているが
原作者ということに加えて
荒木一郎のボンボン性も要素かと…
いやこの映画以外と面白い。
さすがピンクの巨匠だ。
Posted by: xichoux | December 03, 2007 at 12:19 AM
音楽:白井多美雄
このクレジットは、キーポイントになりますね
調べてみるとこの方のプロフィールは圧倒的に
"選曲"としてのクレジットが多い、
無数のピンク映画以外には
まんがはじめて物語
まんがどうして物語
まんが世界昔ばなし
などのダックス作品。
ストップひばりくん
ウィングマン
などレギュラー本数の過剰な頃の東映動画作品。
ですが
話題の
『科学忍者隊ガッチャマン』
『伝説巨神イデオン』
には
「録音」(録音演出ディレクター)
「効果」以外の音響スタッフの名がクレジットされておらず、
この方が「選曲」として関わっている可能性も残っているかと。
>上記の謎曲のインパクトが強すぎるため他の曲の印象が全くと言っていいほどない。
全曲が彼のストック音楽からの可能性高し!
Posted by: xichoux | December 03, 2007 at 06:37 PM
調べたら
『伝説巨神イデオン』は
「音響監督」「整音」「効果」「録音(スタジオ)」でした。
Posted by: xichoux | December 03, 2007 at 10:37 PM
たくさんのレスありがとうございました。特にxichouxさんの
ハートに火をつけたみたいで(笑)。
>>ミウラ和尚さん
>>「二人の水平と一人の将軍」も購入。問題の2曲以外もけっこうエエ音楽だったという感想です。
なんか最近はこういうCDの音楽の方がおもしろかったりする
私がいます。すれっからしも行くとこまでいった感あり。
>>そのうち「レッドショルダー」のほうは、先日ゲームの仕事でマネした曲を作ったらボツになりました。
それはマネがバレたからでしょうか?だとしたら、結構有名な曲と言えます。とわいえ、毎度ミウラさんのフットワークのよさには敬服です。
あとジョー関係の音楽の位置(時間など)がわかれば教えてください。
>>ぷるさん
>>全部が感激の情報でした!
>>こちらを覗かなければ、一生知らないままだったかもしれない(^^;
こんな情報で喜んでいただけて恐縮です。「二人の水兵と一人の将軍」の方はまだ入手可能です。ただamazonだと在庫切れか中古だとバカ高くなったりします。HMVにはまだ在庫ありのようで、「Due Marines e un Generale」で検索かましてください。
ペリーの方は残念ながら入手困難です。もし聞きたければメールでも下さい。
>>xichouxさん
特濃情報ありがとうございます。
>>これってペリー本人ですよね
そですねー。これがエレクトリカル・パレードに使われた経緯も気になります。
ところで映像見ていて気がついた。「hoedown」といえば、あのELP
(エマーソン・レイク&パーマー)にも同じタイトルの曲があります。
まさか関連があるのか?と調べてみたらどうもフォークダンスの1種らしいです。
>>音楽:白井多美雄
>>調べてみるとこの方のプロフィールは圧倒的に
>>"選曲"としてのクレジットが多い、
>>全曲が彼のストック音楽からの可能性高し!
なるほどー。詳細な新情報ありがとうございます。
この人いわゆるアーティストとしての音楽家じゃなさそうですね。
この名まえ頭に入れておきましょう。
何か映画関係の本にひょっこり出てきそうです。
>>荒木一郎のボンボン性も要素かと…
>>いやこの映画以外と面白い。
荒木一郎さんもおもしろいキャリアです。
音楽の方はJ-ポップ史上でも結構重要な位置にありますが、
役者関係の方は結構アナーキーですね。
サンドラ・ジュリアンの来日とも関係あるらしいし。
Posted by: 西川GoWest | December 06, 2007 at 06:11 PM