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人生は野菜スープ~仮面ライダー龍騎

 平成14年に放映された「仮面ライダー龍騎」。「平成仮面ライダー」言われるシリーズの3作目。番組開始当初は”13人の仮面ライダーが登場する””ライダー版バトルロワイヤルになる”など、前2作以上に気をてらった設定ばかりが喧伝されていた。加えて主役ライダー龍騎自身のデザインも奇抜で、現在(2005年)まで6作も続いている平成ライダーシリーズであるが、早くも3作目にしてオンエア前からかなり危惧を持たれていた。結果的に龍騎は多方面に渡って多大なインパクトを残したものとなった。

 13人の仮面ライダーと聞いてまず思い出すのは、石森章太郎氏自ら描いた最初のマンガ作品の同名エピソードで、このお話は本郷から一文字への主役交代劇も担っている。ちなみに「13」という数字はライダーシリーズにとっては重要な数字で、それまでは雑誌や図鑑類のイラスト上でのみ可能だった怪人軍団を映像として実現したのも13話であった。単に1クールという放送上の区切りとも言えるが、コブラ男は2体分と数えライダー自身も入れれば13体と言えなくも無い。
 龍騎に登場したライダー達は主役の龍騎以外はすべてそれまでのライダーの最低限のアイデンティティである複眼を持っていず、また動物モチーフも持っている。もともとはライダーも怪人もショッカーの改造人間。言わば同類同志の争い。つまり龍騎に登場したライダーたちはただのやられ役に成ってしまったショッカー以降の怪人の本来持っていた属性を呼び戻したのかもしれない。どこかの世界では蜘蛛男がゲバコンドルがカビピンガが1号ライダーになったかもしれない。「龍騎はライダーじゃない」とはよく言われるけれど、実はもっともオリジナルに近いテーマを持っていたと言えるのではないか?ちなみにライダー的デザインアイデンティティを持たない「仮面ライダー」を登場させたという事で、後の作品の間口をも確実に広げたと思う。

 「龍騎」がそれまでのシリーズと異なる視点を持っていたのは、別のライダーを倒す事に対し明白に「人を殺している」と言っている点。だから、1年を通じて出現してくる新ライダー達が「倒される」事に対し、とてつもない重みが持たされている。それは最初に犠牲になる仮面ライダーシザースからしてそうだった。わずか2話の登場であったが、単に悪役を倒す以上のインパクトがあった。

 そうした重さが最初に番組に機能したのが、極悪ライダー王蛇が登場する第19話。この回はそれまで生き延びてきたライダー達が一堂に会するという点でもサービス編であったわけだが、もっともヤな性格だったガイ=芝浦淳が第二の犠牲になるエピソード。その死に到る理由が、実に不条理な形で描かれ「龍騎」という作品のもつ厳しい側面をあらわにした。

 番組はそのあたりから早くも登場する最強ライダー・オーディンの登場を期に折り返し点となる。本来なら子供達のための一大エンターテイメントとなるはずの夏休みの劇場版は、「重さ」と「厳しさ」と「悲惨さ」を詰め込んだトラウマムービーとなった。それが「仮面ライダー龍騎 Final Episode」。番組放映途中で最終回を作るという前代未聞の作品で、話題を呼ばないはずはない。そうしたスキャンダラスさも含めて、嫌悪感をあらわにする特撮ファンがでてきたのもこの頃。映画のみのキャラクター仮面ライダーファムの最期には、もっともその重さが収斂されていた。また王蛇の最期も悲惨なものであった。物語の中心となる由衣の自ら選ぶ死など、これが仮にも子供向けプログラムである事を忘れてしまうくらい陰惨な話であった。

 その後秋にはTVスペシャルも放映される。当初登場するはずの13人のライダーは劇場のみに登場するライダーも現れたため、TVシリーズでは全員登場しないこととなった。そのためのお披露目番組であり、そこに登場するライダー達はそれまでの再生怪人達と存在感においてなんら変わる事がなかった。だが、この劇場版のみに登場する仮面ライダーベルデこと高見沢逸郎が放つセリフ「結局ライダーというのは、人間そのものなんだよ」というセリフは、番組のもっとも根本的なテーマではなかったか。ライダーを倒すという事はイコール人を殺すこと。そしてライダーは人間そのものだと。

 2作目でそのほとんどのエピソードを書きあげた脚本家・井上敏樹氏であったが、今作は信奉者も多い女流脚本家・小林靖子氏との分業の形で進んでいく。劇場版はスキャンダルと不道徳に満ちたいかにも井上氏らしい作品であったが、ファンの評価は圧倒的に小林氏の回がおもしろいというもの。それを実感したのが第40話。

 夏以降少しダレていた番組をまた活性化させたのはもっとも不条理なロジックをもつ仮面ライダータイガ=東條悟であるが、その彼の裏切りにより傷つく真司。入院中にふと由衣に自分のやっている事に対して疑問を投げかける真司。変身道具であるカードデッキを床に落としても拾おうともしない描写が秀逸。その後に由衣の「真司君は真司君だから」というセリフ。場面変わって、放送以来2度目のライダー集結となる。番外的なオルタナティヴ・ゼロも参加する一大バトルロイヤルであるが、最後に登場するライダー・インペラーの伏線にもなっている豪華編。ゾルダ=北岡秀一の茶目っ気のある登場もおいしい。そんな中、サバイヴとなって現れる真司。この前段でオルタナティブ=香川教授は神埼士郎に家族を拉致されているが、その家族を助けたという。この時の無言のオルタナティヴの仮面の雄弁さ。表情が見えた。

 そして最後のライダー・インペラーの末路。変身能力を失ったままミラーワールドに残され、それまででもっとも哀れな死に方をした佐野。現世とのつながりを鏡の破片で表現した演出も秀逸。ライダーが倒れる事は人が死ぬ事。このあたりから番組を見終わった後に自分の心の中にも重いものが残るようになっていた。そして、後半の番組を牽引したといっても過言でもない東條悟の死。ライダーとしてではなく人間のまま偶発的に消えてしまう。

 このころからネット上では、最終回がどうなるのか話題が騒然となった。ひとつには劇場版がほんとに最終回なのかという興味。東映側もいつになく情報リークに慎重だった。

 そうして最終回1話前。あろう事か主人公の真司が命を落としてしまう。劇場版では真司に対し友情を示した秋山蓮。TVシリーズではその後少しもそんなそぶりは見せなかったが、ここへきて初めて真司に対し親愛の情を示す。真司は再び生き返るのか?そうして迎える最終回。予告での編集長「この戦いに正義はない。そこにあるのは純粋な願いだけだ」というセリフが重くのしかかる。

 エンディング・テロップのシーンのスナップは、早い段階で公式サイトで公開されていて、その時点で真司やライア=手塚や東條悟が何らかの形で復活する事は明白になっていた。だからどうやって納得のいく形であのシーンに持っていくのかが興味の焦点になっていた。今でも賛否両論あるあのラストだが、口ではうまく説明できないんだけどあのラストでなんか「ふっ」と気持ちが軽くなった事は確か。前週の真司の死からその直前までそうとうに胸がつまる思いがしていたのだ。吾郎ちゃんと北岡の最後には不覚にも泣いてしまった。永遠に来ない北岡を待ち続ける玲子のいるレストランの外には雪。自然までもが味方する演出。浅倉も蓮もそれぞれに死んでいく。なんともいう結末。全てがリセットされてしまうエンディングは安易といえば安易なのかもしれないけど、救いの目的でくっついていると思うので私としてはOKです。さらに最後の真司と蓮が睨み合う(見つめ合う?)シーンで完全なリセットじゃない事も表現している。それでもう充分。

 最後に切通理作氏の大冊「特撮黙示録1995-2001」(太田出版2002年12月10日)からの引用を。

 「現代は社会全体が、安定した輪郭を外から与えられたと思っても、実は流動的で、絶対に固定しているという保障はどこにもなくなっているのは、誰しも認めざるを得ないだろう。不況を含め「この時期が終われば何かが安定する」という心の支えは失われつつある。世界のあらゆる場面で過渡期が常態であるかのようになっている。そんな中で生きる意味を掴んだと思っても、それは捉え直しでしかない。ときどきバチッとフレームが合うことがあっても、その途端、また現実の基盤が揺れ動いていく。」

 1年続いたライダー達の戦いは実は1年ではなくて、それまでに何度も繰り返されてきた事だった事も語られた。「龍騎」はまさに、上記引用のような時代に生きる我々と同じような世界観の中で作られた作品だったのではないか。だから、途中途中でインサートされるメッセージは単なる視聴者である我々にも切実に実感できるものだったのだろう。

 「私たちは常に過渡期にいる。そこを認識して生きようとする試みは、与えられた枠組みが崩壊しただけでパニックになってしまうような硬直した時代精神を乗り越える可能性を、きっと持つに違いない。」(「特撮黙示録1995-2001」より)

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