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ユービキタスなるユービック~Here,There and Everywhere~

最近、未来のコンピュータ・システムの在り方として”ユービキタス・コンピューティング”という事が盛んに言われている。詳しくはここあたり見てください。

”ユービキタス”。ubiquitousと書く。”どこにでもある、偏在する”という意味。英語らしいが、語源はラテン語の”ubique(あらゆる場所)”らしい。要はこれからのコンピュータはどこにでもあって相互に繋がっている姿を標榜すべき、というのがユービキタス・コンピューティングである。たとえばインターネット接続端末が駅の構内に何気にあるような事、あれもひとつのユービキタスな姿の実現と思うし、配信された音楽をMDにダウンロードして購入するアレもなかなかにユービキタスだ。あるいは、電子レンジや冷蔵庫がネットワーク対応しているなんて、以前だったら100%笑い話だった事(実際インターネット普及期にそういう冷蔵庫が発売されたけど、ほとんどまじめに取り合われなかった)が今やセールスポイントになってしまっている。これもユービキタスでしょう。そもそも携帯電話なんて、存在そのものがユービキタスだろうに。使ってる側がほとんどコンピュータ技術を意識していない点なんて、ますますそうだ。ユービキタスなコンピュータというのは、実はコンピュータが様々なものに”擬態”する事なんじゃないか。

さて、西川が好きな作家のひとりがフィリップ・K・ディック。SF界では熱心なファンの多い人で、僕も翻訳されたほとんどの著作は読み漁った。一般には映画「ブレード・ランナー」の原作「アンドロイドは電気羊の夢を見るか?」を著した人というのが、一番通りがいいでしょう。この人の小説の最大の魅力は、なんと言っても「不確定、不安定な現実」につきる。読んでいくうち、現在展開されている世界が実は虚構だったという事がある瞬間わかる、あるいは、だんだんに崩壊していく。これが一度はまるとたまんないんだな。ディックの小説には、このプロットを多かれ少なかれ形を変えただけみたいなものが多く存在するんだけど、病みつきになるとそのワンパターンを味わいたくて次々読んでしまう。映画作家なら、デヴィッド・クローネンバーグが近い感性かもしれない。(余談だけど、立花ハジメのアルバム「テッキー君とキップルちゃん」はディックの小説の世界観にインスパイアされたらしい)。

そのディックの初期の代表作とされる小説に「ユービック」という作品がある。もうお分かりですね。僕は昨今”ユービキタス”という言葉を聞くたびに、この「ユービック」を思い出してしまうのだ。これがこの小説からの引用だったとしたら、この味気ないコンピュータ業界にしては粋じゃないか、なんて思って調べてみたけどどうも違うらしい。ジャンジャン。

これから読む人のために小説のあらすじを書くのはやめておきます。でも話を進めるために断片的に内容を紹介します。見知らぬ土地の薬局にある薬壜のラベルや、紙マッチの広告に自分に向けられた警告メッセージが印刷されている。主人公達が活躍する世界は全ての物事が常に不安定で、何かのはずみで過去の姿に変容していき、逆に主人公たちの肉体は衰退していって遂には死に至る。”ユービック”はその退行と衰退を止める働きをするスプレー缶として登場する。これだけならユービキタスでも無いのだけど、ユービックはいたるところで手に入る。さらに、各章の冒頭につけられた様々な商品の宣伝文句、この商品の名が全て”ユービック”になっている事。つまり、ユービックはこの世界の全てのものに”擬態”している事を暗示している。擬態して偏在する。今言われているコンピュータのあるべき姿とぴったり重なり合う。ちなみに、”ユービック”というのは造語で上記の”ubique”から導き出されたもの。また、小説中でいろんなものを介して発信される警告メッセージというのもとてもユービキタスだ。そのうち僕らはユービキタスに、いろんなところからメッセージを受け止める事ができるようになるかもしれない。例えば朝キヨスクで買った新聞に、自分宛てのメッセージが書いてあるとか・・・・。

この稿をまとめるのにもう一度「ユービック」を読み直してみた。他のディック小説に比べて格段に読みやすく破綻も少ない。全編不安な雰囲気で終始するけど、そうした気分を味わってみるのもまた楽しからずや。代表作「電気羊」とはまた違ったディックの魅力の本質を味わえます。

それにしてもディックの先見性たるや、おそるべし。1960年代に既にこういう概念を予見していたのだからして。なあんて事を考えるのは俺だけかと思って検索してみたら、一人いました。「世界情報通信サミット2001」?なんか政治の臭いプンプンですが、そんな事考えている人が関わっているというのは、なかなか愉快だ。

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