My Photo

twitter

November 2016
Sun Mon Tue Wed Thu Fri Sat
    1 2 3 4 5
6 7 8 9 10 11 12
13 14 15 16 17 18 19
20 21 22 23 24 25 26
27 28 29 30      

Recent Trackbacks

無料ブログはココログ

« アーバン・カウボーイ(Urban Cowboy) ”大人のカウボーイ”って、”いい歳した特撮ファン”みたいなもんか? | Main | ~星空に迷い込んだ男~クルト・ワイルの世界/VA ノンジャンルなコンポーザーとプロデューサーの出会い »

地獄の番犬ケルベロス 従わなきゃならないものなんて、何もない。

押井守シネマ・トリロジー 初期実写作品集
1991年 日本 監督 押井守

 1991年は、日本は言わずと知れたバブル真っ只中。私もリゲインよろしく24時間体制でビジネス戦士をしていた。SEとして独立して2年目だったが、本職の他に音楽製作ビジネス(のまねごと)まで手を伸ばしていた。お世辞にも洗練されたビジネス展開をしていたとは言い難いけど、そんな中でも新潮社のビデオの仕事というかなりメジャー(?)なものも舞い込んできた。もちろん人づてなんだけど、その仕事を持ってきてくれた人の所属する会社は同じ時期ある劇場映画の仕事も担当していた。それがこの「地獄の番犬 ケルベロス」だった。

 この「地獄の番犬/ケルベロス」は劇場版「うる星やつら」「パトレイバー」などで、アニメ・ファンには信頼の厚い押井守監督の作品。ある種監督のライフワークとも言えるテーマを持つ1本で、赤い服をまとった少女と“プロテクトギア”と呼ばれる強化装甲服がキー・ビジュアル・イメージとして共通する作品が何作か作られている。1作目はインディーズに近かった「赤い眼鏡」、本作はその続編なのか、前史なのか、良くわからないけどとにかく2作目。近年3作目と言える「人狼」という作品が、アニメで発表された。

 この「ケルベロス」のサントラ盤は自分にとって、数ある和製劇伴系アルバムの中でも5本の指に入るくらいフェイバリットな1枚。いかんせんバンダイという今はCD業界から撤退してしまった会社の発売だっただけに、復刻の機会もなく現在はネットオークションなどで高値を呼んでいる1枚らしい。音楽担当は川井憲次氏。押井監督とは”唯一無二のコンビ”と呼ばれるほど、ほとんどの作品で音楽を担当している。いつもはオーケストラワークと、打ち込みを併用した重厚な作風なのだけれど、今作では川井氏自身が演奏するアコースティック・ギターの演奏を中心とするもの静かなたたずまいを持つサウンド。”癒し系”というよりは”瞑想系”、個人的にはライ・クーダーがものした「パリ・テキサス」にも匹敵すると思っている。

 劇場公開時は前述の如く激烈な日々だったけど、そういう人脈的な動機もあってふとぽっかりと空いた時間に見に行った。ワンカットの長回しがとても多い映画で、舞台となる台湾の裏道や街並が延々と写ったりと、正直言ってほどなく睡魔に襲われた。”ロードムービー”と言えなくもないけど、おせじにもエンターティメントとして楽しめる映画ではない。だけど、劇場を一歩外に出た途端妙にひっかかる何かがある。自分の中で完結していない何かがある。それ以降、音楽とそれがかぶさる絵が妙にフラッシュバックする。だから、サントラ発売は大変心待ちにしていて、購入して聞き終わった瞬間に初めてあの映画が完結した事を実感した。この映画の発信するメッセージを受け止めるには、この音楽達だけを抽出してトレースする事が不可欠だった。もちろん、音楽だけでも中途半端だ。

 作家の中には、同じテーマを形を変えて繰返し語るタイプの人が多くいる。もともと一人の人間の中に、そんなにいくつもテーマなど存在できるもんでもない。創作衝動を起こさせる命題は、限られて当然ではある。押井監督もまた、そんなタイプの映画作家では無いかと思っている。アニメであれ、実写であれ、主を失った者への哀れみと、もしかすると恨みの代弁のようなもの、そこから自己の存在意義の問いかけ。今作もそのテーマが濃厚だ。どこへいくやもしれぬメロディのギターが、その事をさらに裏付ける。

 ”劇判”であるという宿命を持つ以上、その音楽は映像との力関係と無縁ではいられない。往々にしてどちらかがどちらかにおもねる事が多いのだけど、「ケルベロス」では映画と音楽が互いに微妙なバランス関係で共存していて、そういった意味でも成功作だったと思う。

 この作品の英語タイトルは「STRAY DOG(のら犬)」という。このタイトルの意味するものこそ、押井監督が繰返し語る物語のテーマだったのではと、サントラ盤を聞きながら思った。それは、もしかすると御自身の事なのかもしれない。そして何かに突き動かされるかのように、馬車馬の如く働いたあの頃のオレもまたSTRAY DOGだったのかもしれない。

You can go your own way.

« アーバン・カウボーイ(Urban Cowboy) ”大人のカウボーイ”って、”いい歳した特撮ファン”みたいなもんか? | Main | ~星空に迷い込んだ男~クルト・ワイルの世界/VA ノンジャンルなコンポーザーとプロデューサーの出会い »

「映画・テレビ」カテゴリの記事

TrackBack

TrackBack URL for this entry:
http://app.cocolog-nifty.com/t/trackback/42595/40473386

Listed below are links to weblogs that reference 地獄の番犬ケルベロス 従わなきゃならないものなんて、何もない。:

« アーバン・カウボーイ(Urban Cowboy) ”大人のカウボーイ”って、”いい歳した特撮ファン”みたいなもんか? | Main | ~星空に迷い込んだ男~クルト・ワイルの世界/VA ノンジャンルなコンポーザーとプロデューサーの出会い »